棋士・女流棋士がふりかえる100年

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西村 一義 九段 がふりかえる思い出の一局

大山康晴ー有吉道夫


西村一義

九段

昭和四十四年四月九・十日に第二十八期名人戦第一局が、大山康晴名人対有吉道夫八段(当時)の間で行われました。この対局は今後再び見られないかもしれない珍しい対局でした。名人戦という檜舞台で師弟が対戦するというのはなかなか起こらない出来事だからです。有吉八段は修行時代、師匠の大山名人宅で内弟子生活を送った絆の深い師弟です。この時、大山名人は全盛期で有吉八段は三十三歳の指し盛りでした。戦前の予想では圧倒的に大山優勢の世評でしたが、大山名人の四間飛車に有吉八段が中央の位取り5五歩で対抗して見事に勝利しました。勢いに乗った有吉八段は善戦し、最終的には大山名人の防衛に終わったものの、最終局までもつれ込むという有吉八段の健闘が際立った歴史的なシリーズとなりました。