棋士・女流棋士がふりかえる100年

島 朗 九段 がふりかえる思い出の一局

島朗ー飯田弘之


島朗

九段

棋士になって順位戦C級2組の四年目を迎えた年度、今期昇級できないと自分の将来は終わりだと思い詰めていた、21歳の頃。
8連勝で昇級の一局を迎えたのは1985年の2月21日、飯田弘之四段戦だった。前日緊張から一睡もできずに朝を迎え、対局開始時から体調は最悪。もちろん食欲も全く起こらない。  
こんなに勝ちたいと思った勝負は、今後もあるのかと思ったが、結局この日以上の執着心を持った勝負は四十年近くたっても訪れなかった。気力だけで、若さ故に乗り越えられた、冬の夜だった。
長い時間が流れ、元気に今も対局できる幸運に、ただ感謝というほかない。