棋士・女流棋士がふりかえる100年

伊藤 真吾 六段 がふりかえる思い出の一局

大野八一雄ー伊藤真吾


伊藤真吾

六段

第24期竜王戦竜王戦6組昇級者決定戦(2011年10月26日)
大野八一雄戦の将棋は、お互いに竜王戦5組昇級を賭けた大一番だった。東京将棋会館の片隅でそれはいつも通りに始まった。
そして三段リーグにおいて次点2回での四段昇段・フリークラス入りという特殊なルートでのプロ入りをした私にとって、この対局はC級2組昇級・順位戦への参戦を賭けた、それまでの人生でも最も大きな将棋であった。
大野七段の丸山ワクチンに対し私のゴキゲン中飛車の出だしに進んだ。今振り返ると勝ちづらそうな序盤戦にしているが、当時研究していた形なのでそこは仕方がない。
この対局まで公式戦での連勝が4ヶ月ほど続いており、フリークラスを脱出する最後のチャンス!と熱量を持ってこの一局に、将棋に打ち込んでいた結果が現れたのだろうか、無事に勝つことが出来た。
終わった後は勝利を知った棋士仲間や記者さんが祝ってくれた。
フリークラスは順位戦以外の公式戦に参加することはできるが、10年間在籍をすると引退をしないといけないクラスでもある。そこを抜けたのだ。将棋を続けられる!
四段に昇段した日以上かもしれない、こんなに嬉しい夜はなかった。
あの日の熱い気持ちは絶対に忘れない。