棋士・女流棋士がふりかえる100年

長谷部 浩平 五段 がふりかえる思い出の一局

上村亘ー長谷部浩平


長谷部浩平

五段

第60期王位戦予選(2019年1月24日)
地獄から天国へのエレベーターに乗っているかのようだった。
一年前まで奨励会員であった私にとっては、この一局に勝てば紅白リーグ入りになるという現実についていくことができないまま、対局に臨んでいた。
終盤、一度金取りに打った歩を数手後に成り捨て、香車を打ち換えた。歩打ちが悪手だったと認めることになる上に、歩を一枚タダで捨てるわけでとても恥ずかしい手だったが、その「反省」が効いたようで最後は幸いした。
対局後、上村四段から「リーグ頑張ってください」とのお言葉をいただいた。
一年目の私にとって、棋士としての立ち振る舞いを学ばせていただいたような気がした。
奨励会生活の長かった私にとっては、将棋会館は汗と涙が詰まっているものだと思っていたが、笑みの要素も少しだけ加えることができたと思う。
夢の広がる新会館でも汗と涙を流しながらも、その中にほんの少しだけある笑みを追い求めて精進したい。