棋士・女流棋士がふりかえる100年

三枚堂 達也 七段 がふりかえる思い出の一局

三枚堂達也ー藤原直哉


三枚堂達也

七段

第28期竜王戦6組ランキング戦(2015年3月12日)
この将棋は私の師匠である内藤國雄九段の現役最終局の隣での対局であった。これはおそらく将棋連盟の粋な計らいであったと思うが、この時までに棋士になっていて本当に良かった。師匠の対局姿は最終局でも美しく、あの盤駒と一体になっているかのような姿勢としなやかな手つきは今でも鮮明に覚えている。
私はこの一番を負けたのだが、唯一の後悔は横歩取りを指さなかったこと。師匠はこの空中戦法で時代を創られていた。未熟だったと今となっては思う。
師匠がきっかけでこの世界に入ったのだから必然かもしれないが、いつからか師匠の鮮やかな駒捌きに憧れを持つようになった。師匠の将棋は全ての駒が働き、無駄な駒がない。まだ力不足ではあるが、私もそのような将棋になるように心掛けている。いつか満足のいく将棋が指せるようになり、最後は美しい対局姿で現役を終えること。それが今の私の夢である。