棋士・女流棋士がふりかえる100年

真田彩子女流三段「今だから言える、初心者の頃のエピソード」

真田彩子

女流三段

私の子供の頃は、どの家庭にも将棋盤や囲碁盤があるのが普通の時代と、テレビゲームやポータブルゲームが出始めの時期の境目だったと思う。
 我が家には将棋盤も囲碁盤もあったので、あるからには自然と使って遊ぶもの。将棋は子供の頃の家庭内の遊びの一つとして、トランプやオセロと同じように覚えた。その中で、とりわけ将棋が好きだったわけでもなく「次は何して遊ぶ?」の選択肢の一つだった。
 将棋や囲碁は、家庭内では大抵は父親が一番強いので、父親が子供に教えるという形で休日の親子のコミュニケーションツールとなる場合が多い。我が家もそうだった。
 こんなこと言ってはいけないのかなと滅多に口にしなかったエピソード。実はこの頃、将棋より囲碁のほうが好きだった。「囲碁がやりたい。」という私に、父は「将棋を三回やったら囲碁をやってあげる。」と言うので、囲碁がやりたくて将棋に3局付き合ったりした。付き合うと言っても、善良で真面目な子供だったので将棋盤を前に対局が始まれば本気で頑張り感想戦もした。一局ごとに上達していたとは思う。最終的に私が将棋のほうに進んだのは、父が囲碁より将棋のほうが得意だったのが原因だったようだ。
 結果、将棋連盟の一員として公式戦にも出場し様々な経験をして多くの人と出会い今がある。流された感じもあるが、人生はどう指しても一局か。
 時は流れ、自分も親になった。将棋は頭と心の成長に良いので、二人とも3歳から将棋を教えて小1の頃は年齢なりに強かったと思う。しかし蓋を開けてみれば、二人が一番好きなのはサッカーや野球などのスポーツだった。しかも、一人は女子(笑)。今度は子供に流されて、将棋とは真逆のアウトドアでチームプレーの世界に連れて行かれているが、これはこれで楽しい。