棋士・女流棋士がふりかえる100年

遠山雄亮六段「現会館の思い出やエピソード」

遠山雄亮

六段

2階の道場で5級と認定されたのが小学1年生の時。
それから今まで、現会館で将棋を指してきました。
約35年もの時が経っていることに驚きです。

小学生の時は毎週末に道場で将棋を指していました。
私を将棋会館に預けた両親は、原宿や渋谷などで買い物をして時間をつぶすのが恒例だったようです。
一人で将棋会館に通うようになったのは、研修生となった小学4年生の頃。
研修生になると4階の対局室で指すようになり、将棋会館の全貌(?)を知るようになりました。

奨励会に入ったのは中学2年生の時。
奨励会員になると記録係を務めるようになり、終電がなくなると将棋会館に宿泊することになります。
私は大学卒業まで学校に通っていたので他の奨励会員よりは将棋会館にいる比率は低かったかもしれません。
それでも青春を共にしたと言えるくらい将棋会館に長く居た気がします。

一般の方も使う階段とは別に、関係者だけが使う階段があります。
棋士になることが決まった日。
その関係者用の階段の3階踊り場で、師匠と両親に電話をした光景をいまでもハッキリ覚えています。
現会館で一番いい思い出です。

棋士になり、迎えたデビュー戦。
アマチュアの方との対戦ということもあり、特別対局室、しかも上座で対局をしました。
しかも公式戦で対局するのは初めてのこと(三段時代の公式戦出場ナシ)。
いま思うとすごいシチュエーションです。
そしてこのデビュー戦で敗戦。
プロの厳しさを味わった、現会館で一番辛い思い出かもしれません。
いや、辛い思い出はたくさんあるので、一番かどうかはなんともいえません。

たくさんの記憶や思い出が詰まった現会館。
こちらでの対局も、残りはそんなに多くないことでしょう。
一局一局を大切に、一つでもいい思い出を残しておきたいものです。