棋士・女流棋士がふりかえる100年

山口恵梨子女流二段「現会館の思い出やエピソード」

山口恵梨子

女流二段

 いま将棋を始めたい!と思ったら何をするんでしょうか?将棋のルールをググったりNHKやABEMAの将棋番組を見たり…最近は家にいながらできることが増えてきているなぁと思います。
 私が6歳で将棋を始めた26年前はというと、とりあえず親に連れられて日曜日に東京・将棋会館に行きました。そして2階の研修室で行われていた子供将棋スクールに入会して午前はそちらの教室。午後は隣の将棋会館道場で席料を払って指して10級の認定をもらって帰る、という感じでスタートしました。平日は学校があるので、土日にがっつり一日中指して鍛えるという子供がとても多かったです。
 そこから2年は土日だけ将棋をする生活だったんですが自主練不足でアマ3級までしか昇級できず。一念発起して9歳になる年に、家族ごと千駄ヶ谷に引っ越して平日も毎日将棋会館道場に通って指しまくることにしました。ランドセルを背負って道場に通うのは体力的にきつかったんですが、道場のいろんなおじさん達とお話するのが楽しみになっていました。将棋道場って毎日通うおじさん達が多いんですよね。毎日顔を合わせて可愛がってもらっていました。子供と当たると絶対負けてくれるアマ三段のおじさん、手合いカウンターでポケットピカチュウという万歩計の歩数勝負をしてくれていた指導棋士の関口先生、対局中に形勢が良いと喋り倒すのに悪くなると黙りこくるアマ二段のおじさん、手合いがつかないときはずっと話し相手をしてくれていた職員のおじさん達。大人がたくさんお話してくれるのが楽しくて手合いカードを休憩ボックスに入れてしゃべり倒していたので1日3局しか指していませんでした。もっと指したり詰将棋を解いておいてくれよ…!と今は思うんですが、将棋道場の優しいおじさん達のおかげで将棋がどんどん好きになって続けてこれたのかなと思います。
 将棋会館の4階は私にとって女流公式戦の対局場なので胃がきゅっと痛む場所なんですが、2階の道場は優しい思い出がたくさんつまっているので見るたびにほっとします。女流棋士として、たくさんの人の楽しい体験や思い出を作るお手伝いができていたら良いなと思います。これからもがんばります!