棋士・女流棋士がふりかえる100年

斎藤 明日斗 五段 がふりかえる思い出の一局

斎藤明日斗ー本田奎


斎藤明日斗

五段

第47期棋王戦予選(2021年5月28日)
この対局は予選の決勝。相手が同門の兄弟子の本田さんということもありシチュエーション的には最高で私のボルテージが上がっていた。そして本田さんにリベンジができる絶好の機会でもあった。振り駒で後手番に決まり、戦型は相掛かりになった。事前の段階では後手番の対策は迷っていた。相掛かりは本田さんの得意戦法なのは分かっていたが、ここで避けたら男じゃないと思い相掛かりを選んだ記憶がある。当時の最新型の将棋になった。序盤からいきなり駒の交換が多い将棋で午前中から激しくなり、昼食休憩明けに本格的な戦いに入った。そこからは難解な戦いが続いた。いつも気づけば本田さんの猛攻を受ける展開になっていて、本局もいつもの本田斎藤戦の雰囲気になっていた。しかし私も負けてはいなかった。際どいタイミングで勝負手を放った。72手目の△4五桂。いいとこに手が行った気がする。しかし勝ちになってから決め手が見えず時間も切迫してきて再び混戦模様になってしまったが、守りに使っていた△3一香が詰みに働き幸運だった。中終盤が長い将棋で充実感のある内容で兄弟子にリベンジを果たした一局で印象に残っている。