

片上大輔
七段
※2023年9月19日にご寄稿いただきました。
棋聖戦(2004年5月18日)
晴れて四段になってから、もうすぐ20年。東西の将棋会館で、これまで700局近い対局を重ねてきた。中には竜王戦のランキング戦決勝や順位戦の昇級争いなど、大きな勝負も何度かあった。
ただ思い出の1局、と言うとデビュー戦がまず浮かぶ。
あれは2004年の5月。東大在学中の棋士ということで、一般メディアにも取り上げていただいた。
相手の佐藤紳哉さんは当時、売り出し中の若手だった。たしかカツラはまだつけていなかった。
後手番で四間飛車に構え、居飛穴に組ませて真っ向勝負。会心のさばきを決め、穴熊は完全に崩壊、自陣はダイヤモンド美濃で鉄壁。ところが勝ちを確信した最終盤で「▲9六歩」という地獄突きを食らい、僕は敗れた。
こちらが突き越しているところに、居飛穴側から端を攻めてくる手があるなんて、夢にも思わなかった。あのときの衝撃は一生忘れないだろう。
デビュー戦を飾れず残念だったが、最初にプロの強さを体感できたことは、その後の棋士人生にとっては良かったと思う。
新会館でも1局でも多く指せるように、また、プロとして良いところを見せられるように、これからも頑張っていきたい。