棋士・女流棋士がふりかえる100年

佐藤 康光 九段 がふりかえる名対局

加藤一二三-青野照市


佐藤 康光

九段

今でもはっきりと覚えている局面がある。
1986年。当時はネットも中継もない時代。
高校1年、奨励会二段の私は普段は学校が終わると徒歩5,6分の将棋会館に行き、練習将棋を指したり棋譜を並べ皆で意見を言いながらTVモニターに映る特別対局室の盤面を研究するのが常だった。
この日は加藤一二三九段と青野照市九段の第44期A級順位戦が映っていた。
よく青野先生は和服で対局に臨まれておられる。
日本文化の継承を強く意識されているのだろう。
和服での対局姿を普段生で見ることが出来ない私にとっては貴重なシーンであり自分もタイトル戦以外の対局でも着る機会が増えることになる。
今(2022年6月現在)も現役最年長として頑張っておられる。変わらぬ将棋への情熱がなせる業というほかはない。覚えているのは加藤先生がわざわざ飛角両取りの掛かる場所に角を逃げた局面。ただ両取りを掛けると駒損になるのだが攻めが続く。
当時の私としてはその最先端の感覚が衝撃だった。