棋士・女流棋士がふりかえる100年

小林健二九段「師匠との思い出」

小林健二

九段

師匠板谷進九段とのおもいで

 将棋界に入って半世紀になります。将棋連盟創設100年なのでちょうど半分をこの世界でお世話になったことになります。多くの歴史を作られた先輩棋士との対局、そして同年代の切磋琢磨したライバルたちさらに素晴らしい後輩も育ちました。
 それもすべては将棋界を温かく見守っていただいたファンの皆様と、将棋界を支えていただいた多くの新聞社様とスポンサー様のおかげと感謝しています。今年引退しましたが、これからも感謝の気持ちを忘れずに自分ができることをコツコツと努めてまいります。
 昭和47年3月はじめて師匠の板谷進六段(当時)に会い、一番弟子をゆるされました。中学を卒業してすぐに東京・将棋会館の住み込み塾生として将棋修行が始まりましたが、見るものすべてがはじめてで1年もすると十二指腸潰瘍と胃潰瘍を発症して半年間奨励会を休みました。これでは健二はダメになるとB1組七段に上がった師匠が地元の愛知県清須城の近くのご自宅で内弟子生活をゆるされました。潰瘍はすぐには治りませんでしたが、師匠と師匠の奥様のおかげで健康を取り戻して18歳で当時の最年少棋士としてとしてデビューしました。
 順調に29歳でA級八段になりましたが、その数年後に師匠が47歳の若さで急死して私は一生分の涙を流しました。なにも恩返しができなかったことがとても悔しく思いますが、師匠のおもいを胸に弟子たちの育成と将棋の楽しさ、さらに日本の素晴らしい将棋を様々な形で海外にも発信していきます。東海地区にタイトルの夢は弟弟子の杉本八段の弟子がかなえてくれて天国の師匠も目を細めていることと思っています。