棋士・女流棋士がふりかえる100年

豊川孝弘七段「師匠との思い出」

豊川孝弘

七段

関屋先生との出会いは、私が中学生の時。当時の私は、毎日のように将棋会館の道場で将棋を指しており、そこで先生にお声がけいただいたのが初めての出会いとなる。
関屋先生には、会館の近くにあった「白馬」という喫茶店によく連れて行っていただき、一緒に長い時間を共にした。
先生はコーヒー1杯に砂糖3杯を必要とするかなりの甘党で、よく喋りよく笑う、お茶目な方だった。
私は、関屋先生からたくさんの将棋を教わったが、また同時に人生も教わった。
私が熱くなりピシッと駒音高く指していると「もう少し静かに指しなさい」
また、奨励会時代のアルバイトで、私がうっかりと遅刻をしてしまった時は「一度仕事を受けたら1分一秒遅れてはならない。周りの方にどれ程の迷惑をかけることになるかを考えて行動しなさい」と厳しく叱られたものだ。
ヘビースモーカーの先生に私の喫煙がバレた時は、「何?豊川くん、タバコ吸ってるの?」と言われただけで、さすがに何も言われなかったが…
今思うと、とてもありがたい指導をしていただいたと思っている。
私がなかなか四段に昇段できずに苦しんでいた時も
「豊川くんは大丈夫」といつも静かに信じていただいたこと、感謝しかない。
関屋先生の万寿のお祝いでご自宅へ訪問させていただいた。ちょうど先生が八段に昇段されたので、免状も届ける事ができた。すでに体調を悪くされており、動く事が難しい状態でしたが、免状をお渡しした時には、目からポロポロと涙を落とされ、嬉しそうにされていた。

先生、ありがとうございました。